高齢者の7人に 1 人が認知症の時代に
わが国では、認知症の高齢者が2012年時点で462万人にのぽると推計されています。すでに認知症を発症した方では、さらに重症化しないような取り組みが重要ですが、実際には「診断を受けていないために、適切な治療に至っていない」人が数多く存在する現状にあります。その理由として、認知症について正しく理解されていないことが考えられます。たとえば認知症に関しては、徘徊や妄想、暴言・暴力などがクローズアップされますが、これらは認知症の周辺症状と呼ばれるもので、生活環境や本人の性格、他の病気等の影響で現れるものです。適切な対応やケアができれば、こうした周辺症状をある程度軽減できると考えられています。認知症の発症は予防できる
先ほど認知症の患者数が462万人と述べましたが、「軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)」と呼ばれる予備群の人がさらに400万人存在すると推定 されています。この段階の人は「もの忘れ」が増えてきたことを自覚しつつも、自立した生活ができるために、自分がMCIの状態にあることになかなか気づきにくいという特徴があります。認知症の予防は、MCIの人をできるだけ早く見つけ、その人たちに認知機能の維持回復のプログラムを提供することで、大きな効果が期待できます。
高齢化と人口減少が進む北海道にとって、予防は地域全体で取り組むべき切実な問題です。こうした自治体の認知症予防活動を支援するために、NPO法人ソーシャルビジネス推進センター、生活協同組合コープさっぽろ、北翔大学の連携によって、「認知症になりにくいまちづくり宣言」推進本部を設立しました(平成27年11月)。「認知症になりにくいまちづくり宣言」とは、MCIの早期発見(認知機能テストの実施)と早期対応(運動教室等への積極的な参加)を積極的に実施することを宣言するもので、推進本部は宣言をした道内市町村を情報提供・人材提供の両面から支援します。すでに道内8市町が宣言し、その他、7市町が検討段階にあります(平成28年6月現在)。
認知症予防の取り組みに対して、北翔大学では生涯スポーツ学部健康福祉学科が中心となってバックアップしています。
健康福祉学科は平成26年に誕生した新しい学科で、北海道の超高齢社会に対応するべく、社会福祉士や介護福祉士を養成する福祉領域と、健康寿命の延伸に不可欠な健康・運動スポーツ領域を併せて学ぶことができます。平成27年度からは「介護予防・認知症予防」を学科全体で取り組む主要プロジェクトに位置づけ、「予防」の知識・スキルを併せ持つ福祉専門職の養成とエビデンス創出に向けての研究体制づくりを本格的にスタートしました。また平成28年度からは日本認知症予防学会理事長の浦上克哉教授(鳥取大学医学部)を客員教授に迎え、さらには札幌医科大学と協力関係を築くなど、その体制を強化しています。
自治体職員への研修も行っていきます
「認知症になりにくいまちづくり宣言」推進本部では、北翔大学生涯スポーツ学部健康福祉学科を中心に、実際に認知症予防事業に携わる自治体職員を対象にした研修会を実施します。第1回は認知症の基本的なメカニズム並びに診断や研究などの最新情報についての講義のほか、認知機能テストで使用する「CADi2」および「TDAS」の使用方法と活用についての実習を行います。今後も職員のニーズに応える内容を中心に、定期的に研修会を実施していく予定です。